障害年金と労災保険
障害年金の相談にのっているとよく「労災」では無理ですか?
というような内容の質問があります。
つまり、仮に障害年金の受給が不可能であった場合、労災保険
のほうから補償は受けられないだろうか?という質問です。
労働者の業務上の災害については、会社は当然に一定額の
補償をしなければなりません。(労働基準法の使用者の災害補償責任)
しかし、会社に賠償能力がなければ被害者や遺族は救済されないままに
放置されることになります。
そこで、国が保険制度を運営し、会社は義務としてこれに加入して
保険料を納め、いざ、労働者が業務上の災害にあった場合に、
労災保険制度によって補償をするのです。
つまり、労災とは会社が加入し会社が保険料を納付し、いざとい時には
会社の代わりに災害の補償をする、会社を守る保険制度です。
なので、基本的には、労災の請求は会社が書類を作成し労働基準監督署に
提出するのが一般的です。
もちろん、労働者から申請することも可能です。
その場合は所轄の労働基準監督署に相談してください。
精神障害の認定基準
②の「強い心理的負荷」とは例えば、以下のようなものになります。
【パワハラ】
・部下に対する上司の言動が、業務指導の範囲を逸脱しており、その中に人格や人間性
を否定するような言動が含まれ、かつ、これが執拗に行われた
・同僚等による多人数が結託しての人格や人間性を否定するような言動が執拗に行われた
・治療を要する程度の暴行を受けた
【仕事】
・客観的に、相当な努力があっても達成困難なノルマが課され、達成できない場合には重
いペナルティがあると予告された
・顧客や取引先から重大なクレーム(大口の顧客等の喪失を招きかねないもの、会社の信
用を著しく傷つけるもの等)を受け、その解消のために他部門や別の取引先と困難な調整
に当たった
・発病直前の連続した2か月間に、1月当たりおおむね120時間以上の時間外労働を行
い、その業務内容が通常その程度の労働時間を要するものであった
・発病直前の連続した3か月間に、1月当たりおおむね100時間以上の時間外労働を行
い、その業務内容が通常その程度の労働時間を要するものであった
③の「個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと。」とは、
精神障害を発病した労働者がその出来事を主観的にどう受け止めたかかではなく、
同種の労働者が一般的にどううけとめるかという観点から評価されるものでありる。
簡単に言うと、本人が虚弱体質であったがために発病したという事実だけでは認定せず、
一般的に同じ事象があった場合、多くの人が精神障害を発病し得る状況であった場合に、
認定をするということです。
精神障害で労災認定の難しさ
労災保険は業務災害が起きた際にそれを補償する制度ですが、
うつ病をはじめとする精神疾患の場合、業務起因性を証明するのが難しくなります。
一般的には精神障害は仕事や家庭、人間関係、経済的不安、身内の不幸。等様々な
要因が複合的に重なって発症します。
よって、うつ病をはじめとする精神疾患の原因が業務上であるという証明が難しいという
側面もあります。
明らかに酷いパワハラや時間外労働があった場合は別として、多くの場合はこの
業務起因性を証明するのが難しくなります。
労災より障害年金
上記の理由から、障害年金を請求できる可能性があるのであれば、
経済的な不安を緩和するという意味では、精神疾患の場合、労災よりも
障害年金のほうが現実的な選択肢になるかと思います。