長時間労働のリスク
今国会で最重要法案として位置づけられる「働き方改革」の話は
連日TVのニュースなどで耳にします。
この法案は労働者の命と健康を守るために長時間労働を規制するのが
大きな目的ですが、人手不足が深刻化しているさ中に、長時間労働の規制
という矛盾が生じ、どうも落としどころがいまいちはっきりしいでいる。
では、視点を変えて、そもそも、長時間労働は本当に健康を害するのか?
という点に焦点をあてて考えてみたい。
長時間労働は主に、心臓疾患、脳血管疾患、精神疾患等の原因になり得る
というのが大前提にあり、過労死や自殺を防ぐの目的として「働き方改革」
が行われているわけですが、実際に、長時間労働によって病気になった経験の
ある人でなければ、長時間労働のリスクは頭で理解はしても本質的には理解
出来ていないのではないでしょうか。
そこで今回は長時間労働における精神疾患(うつ病)のリスクについて
掘り下げて考えていこうと思います。
どれくらい残業したらうつ病になる?
イギリスで約2000人の自治体職員を6年近く追跡した調査によれば、
うつ症状を呈した割合は、1日に残業なしで7~8時間働く人が
うつ病になる確率を1とすると、
1日11~12時間働く人では、2倍以上に跳ね上がった。
1日4時間の残業だとして、月に20日働けば、月80時間ということになります。
こうして見ていくと、身体においても精神においても、月80~100時間の
残業は健康に害を及ぼす、ひとつの目安になると言っていいと思います。
厚生労働省の労災認定の認定基準も、恒常的に長時間労働がある場合、
月100時間程度の時間外労働があった場合、心理的負荷の強度を修正する
要素として評価します。
長時間労働の精神疾患リスクは他人ごとではない
東大を卒業し電通に入社した女性社員が自殺した事件はまだ記憶に新しいですが、
彼女は月の残業時間が105時間を超え、12月のクリスマスの日に会社の寮から
投身自殺してしまいます。
「東大」「電通」「エリート」というキーワードに注目され、大きくニュースに
取り上げられましたが、中小企業などでは100時間以上の残業、サービス残業は
いまでも当たり前にあります。
このニュースを見て「これって俺がなってたかも」と思いながら見ていた人も多い
のではないでしょうか。
会社への帰属意識や滅私奉公は時に美談として語られますが、100時間以上の残業、
サービス残業は、経営者の能力不足であり、そのしわ寄せを社員に押し付けるのは
もう時代遅れです。
会社への帰属意識から体を壊すほど働く必要なんてありません。
もし、100時間以上の残業を恒常的にしているのなら一度立ち止まって、本当の
働く意味を一度考えてみるのも良いかもしれません。